『LIVE』 Vol.24
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009すが、気分的にリフレッシュできますし、地面が土だと踏む感触も違います。本当に感性を高めるなら小さい頃からやるのが一番いいと思いますが、僕は23歳の頃でも非常に刺激的でしたし、感性を磨けば専門種目を極めるときも、考え方やひらめき、技術を習得するときのアプローチにも非常に幅が出てくると思うんです。女子スプリンターの福島千里さんは、アップのとき必ずバスケット等の球技を取り入れたり、僕らも合宿のとき砂浜やゴルフ場の芝生を走ったりします」よく走れたときのプロセスを記録・再現し、感覚を掴む先ほどの「走る行為にはプロセスが大切」という話ですが、やはりその中から発見があれば、練習も楽しく続けられるということでしょうか。「競技者という立場でいえば、どうしても結果が全てではあるので、いろいろなアプローチをしながら結果に向かっていく。それをいわば楽しんでいるわけですよ。道は1つだけじゃないんですよね。つらい1つの道をずっと進んでいたら、つまらないと思うのですが『こういうのもいいんじゃないか』『この方法がベターではないか』と日々、身体の変化を感じながら最終目標に向かう。結果が良かったら『あのときああしたから、こうなったんだ』と振り返るのも面白かったりする。端的に言うと、ダイエットとかもね、もっと細身の服を着たいという理想があったとしますよね。それをハウツー本をみてそのまま実践するのが楽しいのか、それともいろいろやってみて『これが一番効果的だった』というプロセスを楽しむかの違いです。最終的に結果が出ればいいんでしょうけど、自分なりに工夫している人は発見もあるし、行動自体が楽しくなるということでしょうね」 そうしたプロセスのなかから、ベストな状態を発見していく。「市民ランナーの方でも『何分でどのくらい距離が走れたか』、逆に距離を決めて走る人なら『今日は何分で走れたか』とか、タイムを取っていると思うのですが、やっぱり調子のいいときや、走り方が良かったときは、ラクに距離や時間をクリアできているはずなんです。そのときのプロセスをちゃんと知っておくこと。それが大事ですね」朝原さんは練習日誌をいつも付けていたそうですが、それもプロセスを覚えておくためなのですか?「そうです。日誌には、感覚的なことも書きますし、練習方法で『これはすごく有効だった』ということも、事細かに書きます。それを試合のときだけではなく、練習のときも思い出して、もう1回実践してみるんですよね。同じようにラクに速く走れたとすれば、その方法は自分にとっていいということになります。でも、それを繰り返しているうちに、その方法では満足できなくなるので、一度またそれを崩してつくり直していく。それが面白い」リカバリーを工夫して自分の生活に合った練習をベスト記録を出してから引退するまで第一線でパフォーマンスを維持できたのは、どんな工夫があったのでしょうか?「加齢に対しては、選手もみな恐怖心を持っているんです。僕も30になるときはものすごく怖かったんですよ。若い頃は1ヶ月に10試合しても体力が落ちないのですが、年をとると1ヶ月10回やったら初めの2回は走れても、あとはじり貧で走れなくなってしまう。自分が弱くなるところは必ずあるので、そこは認めないといけない。そこを技術で補うのか、リカバリーで補うのか。若い頃は、いくらでも練習できますが、年を重ねると、記録を出すために、いかにムダな労力を減らして当日に合わせていくかなんですよね。それと、練習する前に練習する身体をつくらないといけません。僕は2006年、1年間試合もほとんど出ずに過ごした時期があったのですが、そこから試合に臨むとなると、ケガをしない関節、練習に耐えられる肺をつくってから、やっと練習です。いきなり強い練習をしたらどこかおかしくなってしまう」コンディショニングが大切になるんですね。「一般の方でも、定期的に少しずつ練習できる人は、それなりに体力がついて回復力が上がってきますけど、初めからドカッと練習しようとすると、疲れてイヤになってしまいますよね。たとえば、週3回走るとして、その人自身、その練習で足りないと思っているとしたら、その1回1回をものすごく練習して疲れちゃうと思うんです。徐々に高めていくためには、3回のうち1回は練習の質を軽くするとか、頻度と強度を考えた方がいい。リカバリーのやり方で、自分の体調に合わせたトレーニングはできると思います」理想のフォームはあってもフォームは普遍的ではない市民ランナーの方のフォームづくりに役立つコツはありますか?「まずはどんな風に走っているか、姿を知ることが大事だと思うんですよね。ビデオに撮ってみれば、軽快にカッコ良く走っているつもりがこんなに無様だった、なんて気づくこともあると思うんです。ただ、僕はカタチから入るのは、あまり勧めてはなくて……というのは、たとえば僕がウサイン・ボルトのマネをしても、まあ、特徴を捉えて走ることはできますが、速くは走れないのでね。マネすることも大事ではあって、僕もいろんな人の走り方をパクって試しましたし、世界一の選手を見ると、最先端を行ってると思ってしまう。でも、足の運びとか姿勢とか、その都度カタチは変わっていってるんです。ただ、大事なのは、自分の感覚として、レースの一番苦しい中盤のときにすごくラクに走れるとか、そういうところなんですよ。それがクリアできていれば、おそらくフォームも良い。ビデオを撮りながらそういうところを探っていくと、自分のラクに走れる状態が見えてくると思います」最後に、現在、ご自身の主催されているクラブでは、どんなことを一番大切に指導されているのでしょうか?「本来、僕が見ていきたいのは、子供たちがどう考え、どう感じて、身体を動かしてくれるかなんですよね。僕たちが小さい頃は、誰に指導されることもなく、自分で想像を巡らせて遊びを考え、工夫していた。もちろんトラッククラブなので走り方も教えますが、フォームとかは決して普遍的なものではないし、基本的には自主性や自分の感性を高めてもらうのが狙いです。結局、僕たちアスリートも強くなるにつれ、感覚勝負なんですよね。いろいろな練習方法を自分で選択し、走り方を考え、感じて、工夫する道を通ってきている。そういう力がないと本当に強くはなれないと思うんですよ」今回のインタビューのきっかけにもなった朝原宣治さん監修の本著には「感覚で自分の走り方を把握する」ための意識づけや「身体の上手な使い方」についても細かく書かれている。技術だけでなく走ることの本質的な理念に言及した、ランナーのための新しい手引書だ。「ランニングを極める~アレクサンダー・テクニークで走り方の感性をみがく~」マルコム・ボーク+アンドリュー・シールズ著(春秋社)

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