『LIVE』 Vol.26
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しなやかな、体幹トレーナーの本橋恵美さん曰く、「最初のころより若返った」篠宮さん。181センチの長身。もともと無駄な脂肪もない体だったが、体幹トレーニングによってさらに筋肉のバランスも整い、研ぎ澄まされた体になった。Ryuzo Sino記録に並び、同年には、記録を抜く107メートルを達成した。 フリーダイビングは、海中を自由気ままに泳ぐ魚たちとは違い、ただひたすらに、まっすぐと海底に降りていく。ただ1本のロープをたぐり、自分自身が申告した水深の地点のロープついているタグをとってきて浮上するという競技である。シンプルなルールであるが、この競技は、つねに「死」と隣合わせだ。「水深100メートルに挑戦するということは、行き帰りで約2分、帰りで約1分半を要します。つまり4分は呼吸しないということになりますね」 無呼吸状態になり、過度の酸欠状態になると人は「失神」する。この競技では「ブラックアウト」と呼ぶ。「潜っている間も全身が酸素を消費しているので、脳の酸素も欠乏状態。失神は、ほんの少しでも無理をすれば陥る危険性が高いんです」という。しかも、この競技には水面に戻ってきてから30秒間、意識を保てなければ失格というルールがある。実際、篠宮さんもブラックアウトを何度も経験しているという。篠宮さんが体幹を鍛えることの意味とは「息を止めて行うこの競技は、酸欠状態になります。身体活動ですからダイビング中は、酸素も消費し、同時に二酸化炭素が出てきます。こうした無呼吸状態に対し強い体を作ることが求められるのです。 しかも水中は地上とは違い水圧との闘いです。無呼吸状態で、無駄な動きをすると抵抗が強く、さらに体内の酸素を使いすぎ、不要な二酸化炭素を多く作り出してしまいますから、たいへん効率が悪く、さらに危険を伴うことになるのです。そこで、重要なのが、いかに効率よく動けるか。その答えが、体に安定した軸をつくることなんです」 篠宮さんは、こうした競技の独特の特性を考え、いろいろなトレーニングを試みてきた。そこで行き着いたのが体幹を効率よく鍛えられるピラティスだった。「筋肉を増やすと増えた分だけ、運動時に酸素を必要とします。とくに太ももの筋肉は体の中でも大きな筋肉のため、あまりここに筋肉を増やしてしまうことは有効とはいえませんし、むしろ脚力を使うとかえって体が安定せず、非常に無駄な動きが増えてしまいます。いっぽう体の軸を安定させることができると、無理に脚で水をかくような動作をしなくても効率よく潜ることができるのです」 強い水圧のなかで体がブレずに下降し、力を要さずに浮上するか。この効率の良さが勝ち負けを決めるのである。篠宮さんのフォームをみると、大幹部分をややS字にしならせ、そのしなりを腕や脚に伝導させている動きをしているのがわかる。その姿はじつに美しい。篠宮さんを指導する体幹トレーニングのトレーナー・本橋恵美さんによれば、「美しいフォームというのは、それだけ無駄のない動きをするということなんです。フリーダイビングでは筋肉をできるだけ使わず、背骨と骨盤の動きに手足が連動してしなやかに動き、エネルギーを消費しないようにする状態が美しくみえるフォームなのです。篠宮さんが最初にトレーニングにきたときは、太腿に力が入るようなフォームだったんです。しかし、今は筋肉の強さに頼らない、魚のような動きで潜れるようになったと思います」という。恐怖心を克服するためにも心身の安定を作る。 先にも述べたように、少しでも無理をすれば危険な競技である。「瞬間的に怖いと思うと、全身の筋肉も、肺や心臓といった内臓も固まるような感じがあります。当然、その恐怖感は酸欠につながります。ですからできるだけその恐怖感が大きくなる前につぶしておかなくてはいけないんです。僕は、恐怖感が小さいうちに、きちんとそこに向き合い、それ以上を大きくならないよう、そこでとどまってくれるようにしていますね。あえて緊張感を認め、自分でコントロールするんです。体は正直ですから、怖いと思うと、どうしても水面に早く帰ってこようと味わってみて、一番うれしかったのは、数字的なものよりもまだ先がある、先へ行けるというあの頃の気持ちをまた手にしたことかもしれません。(中略)身体的には限界まで近づきましたが、心理的にはどこまでも落ち着いて穏やかでした。あんなに静かな場所は他には知りません。またあの場所に行きたい、あそこを越えて行きたい! と無性に思えてきます。そしてそれが世界記録であればそれ以上の喜びはないでしょう」するんです。すると太腿の力にたよって足フィレをぶんぶん振り回してしまう。しかし、これは力を発揮しているようで、太腿に水圧がどんどんかかり、ぜんぜんスピードが出ないんです。体幹から力を発揮してしなやかに帰るほうが、水圧の抵抗が少なくスピードが出るんです。つまり、そういう体の使い方も心の状態が左右するわけです。逆をいえば、そういう体の使い方ができると心も安定するのです」 強靭な精神は強靭な肉体に宿るということだろう。 世界記録は、124メートル。篠宮さんにとってはあと9メートル。冒頭のブログにはさらにこう綴られていた。「いまフリーダイビングを始めた当初のみずみずしい思いを再び味わっています。はじめた当初はどこまでもいけると思っていました。ところがだんだんと世界との距離が開き、苦しくなっていました。115メートルの世界を「体の軸がブレないと、心も安定して潜れるん photo:Frederic Buyle019

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